院展の初日です。
初日はいつもどきどきします。自分の絵の見え方というのがアトリエで見るのと会場で見るのとでは全然異なるからです。アトリエでは「もうやるべきことはやった」と思っているのに、会場では「まだまだやるべきことはある」と思ってしまいます。
地道な作業も、ストイックな練りこみも、その時のベストを尽くして心行くまで作品と向き会ったと思っていても、手を離れるとまだ足りない気がする。そう思い続けていつも描いては手を離し、また描く・・・。
相変わらずそう思いながら描いた今回の作品・・・「日だまりの記憶」。
いつも日向でいられることはない。日は陰り、空は曇り、無表情な空気に包まれる時間・・・そんな時もいつかの日の光の記憶を持って変らずあり続けること。不変の存在と強い意志。そういうのは暖かさの記憶があるからそうあり続けられるのではないだろうか、と思う。
スケッチをしている時に太陽のない無表情な空と棕櫚の間を通り抜ける風の音がした。固い葉が互いにぶつかりあって「パラパラ、バララ、バララ」と蛇腹を擦り合わせるような不思議な葉の音を風が奏でていた。
無表情な空と日だまりの記憶、そこに吹く風を生み出したいと思った。
いつも何か新しい発見と感動を見つけなければ・・・。
まだまだやれる。
いつも前進あるのみです。
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第64回春の院展
東京展
2009年3月31日(火)~4月12日(日)
日本橋三越本店7階特設会場 (入場無料)