夏の間は、院展の制作にかかりきりで、大学のアトリエを借りて大きな制作に取り組んでいました。
始めの一色はいつも緊張します。真っ白な画面に立ち向かわなければならず、こんなに真っ白で大きな面積を埋めるということがとても勇気が必要で、一瞬憂鬱な気分になります。でも、描き始めてしまえばのめり込んでいきます。・・・そんな1ヶ月は修行僧のようで、ストイックな毎日でした。
<写真左>
まさに描き始め。奥にあるのは同時に描いていた秋の沼津の展覧会用に制作していた絵。すごく小さく感じます。(奥が10号と20号です)日本画は描き始めるまでに時間がかかります。
絵が描けるこの状態に至るまでに、パネルの下張りをしたり、和紙にドーサ引き(にじみ止め)をして裏打ち(補強)をして張り込みをする・・・この工程だけで4~5日かかります。
<写真左>
描き途中。地塗り・彩色・線描・・・様々な仕事を画面に注いでいく。
この時は線描。
しばらく描くと手が真っ黒に。
<作品>
秋の院展に出品した作品(一部)です。
去年9月にパリに行った時に取材したノートルダム寺院の裏側から見たところです。
「誘い風」
その頃のパリは日中の日差しが強く、夏の暑さを感じるが、時折ふっと風が吹くと秋の冷気をつれてくる、そんなマーブル模様のような空気の中を散策していました。
季節の移ろい行く瞬間、季節が入り混じる・・・気まぐれな空、秋染めの時、移ろいの誘い風。
そんな風に誘われて裏路地を曲がり、広がる寺院の空を抜けていくのは秋の色と私の心。
風に教えてもらった素敵な出会い。
東京展も無事に終わりました。
美術館に足を運んでくださった多くの皆様に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
<今後の巡回地>
広島展 22年1月21日~2月2日
宇都宮展 同2月10日~2月21日
長崎展 同3月12日~4月11日
お近くにお出かけの際は是非お立ち寄り下さい。