今年の世界文化賞が発表されました。
その中の彫刻部門にアニッシュ・カプーア氏が選ばれていました。
私が学部の頃、大学の招聘講義があり、その後に大学の近所のギャラリー(SCAI)で展示があり、そのオープニングパーティーに出てお話ししたことがありました。
カプーア氏の作品は彫刻というよりもコンテンポラリーアートやインスタレーションといった新しい世界を展開しており、毎日絵筆や鉛筆片手に過ごすファインアートを主として制作している私にとってはとても衝撃的な体験でした。
作品と向き合うのは鑑賞ではなく、体験である。
一つ一つにフィロソフィーをもってそのコンポジションが決められる。
そう言っていました。
氏はたまたま私が手に持っていた物に何かを書こうと手を差し出したとたんに、それがスケッチブックであることに気付き「ノー」という仕草を続けざまにし、
「これはあなたの作品を描く空間であり、そこに私が何かを加えたらそれは私の作品になる。それはできない。」
と微笑みました。
空間に対する意識の高さというものを垣間見ました。
それから10年以上経ちました。今、作品を制作する時に、直接的でないにせよ影響を受けたことが何かの形になってるような気がします。鑑賞が体験になるように、モチーフや構図にフィロソフィーがあるように。
私にとっては一見全く関わりのないような世界観を持った作家のように思えますが「芸術の先生」でした。
Photo by:SCAI THE BATHHOUSE 1999