大きな作品を制作する時に必ず通る道・・・裏打ちです。
糊を煮るところから始まり、裏ごしして溶きのばす。
そして本紙に合うように裏打ち用の和紙をちょうどいいように用意します。
表の紙は1枚ですが、裏の紙は3枚の和紙をつなぎました。
つなぐのは「くいさき」といって切り口を引きちぎる、あの和紙特融のケバケバを出して紙同士をつなぎます。
こうすることで滑らかな継ぎ目になります。
この伝統的な作業ともいえる、なんともスローな作業があって初めて制作に取り掛かれるのですが、毎度この作業をすると億劫な気持ちと「さぁ描くぞ!」というワクワクした気持ちが入り混じった不思議な感覚になります。
今でもこの作業から入ることで初心に戻ります。
絵を描くことは紙に筆を下した瞬間ではなく、こうやって作業していることも絵を描いていることになると思っています。
どんな作品にしようか、これからどんな手順で進めようか、色合いは、自分のメッセージは、思いは、感動は・・・。
きりのない絵を描く行為は実際に筆を動かさない時間の中でも一生懸命頭の中で行っています。
そういえばどんな風景を見ていても、食事をしてても、お風呂に入っていても、いつも絵を描いているみたいです。
スケッチブックと鉛筆がなくても、いつも頭の中のスケッチブックに記憶という筆を動かして一生懸命描いてしまいます。
いつの頃からか、気が付いたらそうなっていました。
裏打ちは体力も消費して大変な作業ですが、嫌いじゃないです。
毎回、「あ、また裏打ちする時期がやってきた」と大きな作品と向き合う時期にピリっとした気持ちになります。